[ある兄妹]

 むかしむかし、あるあばら屋に貧しい夫婦が住んでいました。どのくらい貧しいかというと、日々のパンにさえ悩んでしまうほどです。夫婦には二人の子供がいましたが、養っていくのは難しくなってしまいました。

 子供の名は兄のほうは「ヘンデル」、妹のほうは「グレーデル」といいました。夫婦は口減らしのために泣く泣く兄妹を森の奥深くへと連れていって、そのまま置き去りにしてしまいました。

 しかし夜が更けると、兄妹があばら屋に帰ってきたものだから夫婦は驚愕しました。翌日も夫婦は兄妹を森へ連れていきましたが、やはり帰ってきてしまいます。夫婦は困り果てました。

 ある日、いつものように夫婦は兄妹を森へ置きにいきます。そして兄妹はいつもとは違った様子で帰ってきたのでした。

「おとうさん、おかあさん。悪そうな魔女を見つけたから、やっつけて宝物を奪ってきたよ」

 真っ赤な服を着たヘンデルが得意そうにいいます。グレーデルが宝石の入った袋をもって、にこにこ笑っています。夫婦は深くは聞けませんでした。

 こうして、豊かになった一家は平和に過ごしました。が、兄妹が大きくなったころには、またお金は尽きてしまいました。しかたないのでグレーデルは娼婦になり、ヘンデルは盗みをはたらくようになりました。

 ある日、ヘンデルがグレーデルのお尻を撫でながらグレーデルに聞きます。

「なあ、グレーデル。なんで俺たちがあんな老いぼれ、養ってあげなけりゃならないんだ?」
「それもそうね、兄さん」

 そして兄妹は森に置き去りにしたことをいまさら責めて、泣きながら頭を下げた夫婦をこん棒で撲殺してしまいました。それから兄妹はあばら屋を出て、ふらふら放浪しながら過ごすようになりました。


 グレーデルは身を売り、ヘンデルは強盗をします。あるときヘンデルが間違えて獲物を殺してしまったので、兄妹は死体を隠せるところを探し回りました。

 すると森の奥深くに、洞窟がぽっかり口をあけているのを見つけたので「これはちょうどいい」と、入っていきました。

「兄さん、これであたしたち、もう歩き回らなくてもいいわ」
「そうだねグレーデル」

 その洞窟は人に見つかりづらく、兄妹のような性悪にはたいへん居心地のよい場所でした。そのまま兄妹はそこに住み着きました。

 それからヘンデルは強盗に出かけると、まいど死体を引きずって帰ってくるようになりました。兄妹は死体がただ腐るまでほうっておくのはもったいない気がしたので、死体の肉を食べるようになりました。すると、もう金品のたぐいはいらなく感じてきました。だって死体さえあれば生きていけるのです。

 グレーデルが死体を塩漬けにして、調理してくれました。ヘンデルは狩りに出かけました。ヘンデルは美しい子供を見つけると、生きたまま洞窟へ連れてきます。そして兄妹は楽しんでから子供を殺し、食べるのでした。夜になると、ヘンデルとグレーデルはまじわります。

 そのうちグレーデルのお腹が大きく膨れるようになりました。身ごもってしまったのです。グレーデルが子供を産むと、ヘンデルは殺して食糧にしようとしましたが、グレーデルはそれをとめました。

「待って、兄さん。この子を教育してあたしたちの仕事を手伝わせましょうよ」
「それはいい考えだ、グレーデル」

 子供は育つと、ヘンデルの狩りに一緒にいくようになりました。グレーデルはまたお腹が大きくなりました。こうしてヘンデルとグレーデルの一族は栄えていったのです。

 何十年もたつと老いたヘンデルとグレーデルは、病気になって亡くなってしまいました。しかしもう、あたらしいヘンデルとグレーデルが一族を率いていたのでなんら心配はありません。

 お腹がすくと、ヘンデルとグレーデルたちは洞窟から飛び出して、見つけた人間が五人以下ならば素早く皆殺しにしました。欲がつのると美しい少女か少年をさらってきて、グレーデルはお尻で窒息死させたり、ヘンデルは貫いて殺したりしました。

 そして、グレーデルのお腹は膨らむのです。兄妹はこんな生活を気が遠くなるくらいつづけていきました。

 もちろん次々に人が行方知れずになってしまうので、世間の人たちはあの森には恐ろしい獣がいるに違いないと噂しました。正体を暴いてやると勇んで、森を探りにいった勇者は帰ってくることがありません。人々は恐れおののき、森には決して近づきませんでした。ただ何も知らない旅人たちや、遊びにきた子供たちが哀れな犠牲者になっていきました。

 しかし、ついにヘンデルとグレーデルたちに終止符が打たれるときがきました。狼使いの赤ずきんちゃんが「これじゃ、おばあちゃんの家へいけないじゃないの!」と、怒ったのです。

 赤ずきんちゃんはライフルを二丁たずさえ、狼を何十匹も連れて森へ乗り込みました。鼻のいい狼たちですからまっしぐらに洞窟へと向かいます。

 洞窟に入るとちょうどヘンデルとグレーデルたちが、死体を塩漬けにしているところでした。驚いたヘンデルとグレーデルたちは、いっせいに赤ずきんちゃんに襲いかかりました。

 赤ずきんちゃんは両手のライフルで抵抗し、狼たちは援護します。血生臭い争いのすえ五十人いたヘンデルとグレーデルたちは、二十人に減ってしまいました。弱りきり、ついにヘンデルとグレーデルたちは降参して、赤ずきんちゃんのお縄にかかりました。

 ヘンデルとグレーデルたちは裁判もなしに死刑を言い渡されました。なぜならヘンデルとグレーデルたちは自分たちのしてきたことの何が罪なのかさえ、わからない状態だったからです。人を殺し、その肉を食い、欲望を満たすことはヘンデルとグレーデルたちにとって自然すぎる行為なのです。人々はヘンデルとグレーデルたちを「悪魔の一族」と非難しました。

 そしてヘンデルとグレーデルたちは幼児も含めて生きたまま、体をバラバラに切断されて殺されたあと、燃やされてしまいました。

 赤ずきんちゃんは謝礼として一生のうちでは使いきれないほどの金貨をもらい、裕福に過ごしました。



 END.



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